玉井康之北海道教育大学釧路校教育学科

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教育基礎コース 2グループ編成の際のコンセプト

1. 教育学の教員は?

グループ員:川前あゆみ・玉井康之・二宮信一のグループ
研究室名称:教育基礎グループ 臨床教育学研究室

2. 臨床教育学が求めるコンセプト

 格差社会と言われる現代においては、子どもたちの発達に影響を及ぼす地域の経済環境・家庭環境・学校環境等の格差が拡大しつつあります。それらの環境の格差とともに、人間関係や協同関係が希薄化して、家庭・地域・学校などで、大人と子どもの間、子どもたちどうしで、内面的な不信感や疎外感をもたらしています。また都市・市街地とへき地では、医療・福祉・学習塾・専門家等の社会資源の格差も大きく、専門的なケアが受けられないまま、放置されている子どもも多数います。


 これらは、子どもの発達にも様々な格差や、内面的なゆがみや、個別的な課題を引き起こし、非行問題や学力格差やコミュニケーション形態の変化などの形で現れたりします。また軽度発達障害の問題や虞犯行為に至る心のゆがみなど、対応を間違えると、二次障害をもたらしたり、学級全体が崩壊していく課題も少なからず生じています。それらは教師から見えにくく、またそれらをマイナーな問題として取りあげない傾向もあります。一方このような地域であるからこそ専門家としての教員の役割も大きく、あらゆる幅広い知識を持つ教員が地域から頼られるという側面も大きくあります。


 ひとたび北海道釧路地方の問題を見ると、被生活保護者は釧路市内だけで7800人(約20人に1人)と全国で最も多く、母子家庭も10%強存在しています。経済的に高校・大学に行けない生徒は多く、釧路管内の高等教育進学率は20%以下、根室管内は7%で、これらの数値は東京都の進学率の3分の1以下です。

 

 家庭の問題も深刻で、児童虐待の通報は、百数十件と道内で最も多く、まりも学園等の児童福祉施設入園者も多くいます。十分な教育を受けられずに、少年非行・逸脱行為に走る子どもも多くいます。またトラウマや軽度の発達障害を抱える子どもも多くいます。学校の統廃合問題も、地域産業と生活環境の崩壊、へき地地域の過疎化によって毎年道東で10校程度が統廃合されています。釧路市内だけでもあと5年間で1学年に500人の子どもが減少することが予測されています。これらの背景には、自治体財政が逼迫していて、自治体職員も職員数の3割カットや給与の2割カットを行うなどの厳しい現状も関係しています。

 

 様々な課題を抱えた子どもたち、年収100万円以下の極貧家庭の子どもの環境、非行少年の問題、発達障害を抱えた子どもと親の課題、農林漁業・炭鉱業の崩壊と過疎化した地域の子どもたちの問題、など、日本の矛盾した環境は、日本の端であるへき地地方から集中して現れます。

 

 これらの特別な環境におかれ支援を必要とする子どもたちは、一般的な教育指導に加えて、特別な配慮と支援方法が必要であり、そのような視点と指導方法を持つことが、学級や子ども全体をトータルにとらえていく新しい指導力を形成していきます。例えば、高学年でも二桁の足し算が出来ない子、家庭の中で事実上養育を放置された子ども、すぐに暴力に訴える子ども、万引きやカツ上げなどの非行を繰り返す子ども、学級から出ていったり学級を乱す子どもは、指導においても一筋縄では対応できない課題があります。

 

 すなわち、家庭・地域・学校において、現代社会のゆがみの中にいる子ども達や現代社会から放置された子どもの状況を構造的に捉えなおし、教師・教育の現代的使命を明らかにしつつ、それに対応しうる新たな力量を形成した教員の育成を目指すことが求められていると言えます。

 

 マイナーな問題と見られた現代社会から放置された子どもや、危機的な教育環境の中で、様々な問題を抱える子どもたちに対応できる発想と、家庭や地域を巻き込んだトータルな指導力を臨床的に培っていくことが今求められています。いやむしろマイナーであるからこそ一番先に見えてくる先進的な課題にもなるのです。何故なら、マイナーな子どもほど、教育や社会の問題を一番早く敏感に感じ取っている子どもたちであり、そのマイナーな問題をとらえることが、実は、やがて普遍的に起こりえる問題を予想し対応する力につながっていくからです。皆さんには、マイナーな子どもやマイナーな教育現象と見なされた課題から、現代の教育課題の普遍的な課題とそれに対応する新しい力量を考えてもらいたいと思います。

3. 学界・学問的研究背景

社会教育学、教育社会学、生涯学習論、地域教育論、へき地教育学、特別支援教育学、障害児教育学、応用行動分析学
家庭教育論、地域学校経営論、総合的な学習論、体験学習論、教師教育学、教育経営学、教育行政学

4. 目指すべき教師像

◎子どもと向き合える教師になろう。  
◎非行などの問題を抱える子どもに向き合える教師になろう。  
◎子どもどうしの社会関係・人間関係づくりを進められる教師になろう。  
◎発達障害などの課題を抱える子どもに向き合える教師になろう。  
◎自ら地域の中に入り、地域住民とつながりを作れる教師になろう。  
◎保護者と教育・子育てを語り合える教師になろう。  
◎へき地・小規模校を支えられる教師になろう。  
◎道東の自然と環境を生かした教育を創る教師になろう。  
◎体験学習や遊びを指導できる教師になろう。  
◎自らの教師の学びと育ちを振り返られる教師になろう。  
◎教員どうしで悩みや指導課題を語りあい共有できる教師になろう。  
◎単なる批評・評論に留まらず自ら責任を持って関われる教師になろう。

5. キーワードと具体的なテーマ

・就学援助と学力問題・進学問題
・まりも学園等の児童養護施設
・児童虐待問題

・いじめ問題の環境と対応
・13万人の少年刑法犯の実態と保護観察少年の課題
・少年犯罪・非行の傾向と対応方法
・飲酒・たばこ・薬物等の問題
・問題行動・逸脱行動の程度およびサインと対応方法

・表現・コミュニケーション能力向上の方法
・ソーシャルスキル・友達理解の具体的方法
・携帯電話・メール・チャット等の
コミュニケーションの現状
・自己内発力・自己肯定感の形成
・自己認識と相互認識
・引きこもり・不登校

・小学校教師と特別支援教育
・軽度発達障害のある子どもへの対応
・障害を抱える子どもの保護者への支援と連携
・障害理解教育
・専門機関・NPOとの連携
・学校コンサルテーション・校内チームアプローチ
・福祉と教育、および福祉教育
・医学と教育
・多職種ミーティング
・発達障害と青年期・就労問題
・地域連携、保護者支援、チームアプローチ
・インクルージョン、反省的実践家
・エンパワーメント
・ボランティアの教育とボランティアネットワーク

・へき地教育の課題と可能性
・小規模校教育と少人数教育
・不登校児童生徒の自然体験による教育効果
・都会と田舎の人間関係の違い
・へき地への無意識の敬遠意識の転換
・へき地の進路問題と進路指導
・へき地と情報教育
・へき地・小規模校の教師の学びと成長
・学校規模と学校運営

・不登校児童と山村留学
・自然体験学習・キャンプの効果
・農業体験学習の効果
・社会体験・労働体験学習の効果
・学級ゲーム・レクレーションゲーム・アイスブレイク
・孤立した子どもの放課後支援と居場所
・子どもの家庭生活実態
・片親家庭および両親がいない家庭への対応
・保護者の学びと教師のかかわり
・児童館・学童保育の役割

・子どもの遊びのプログラム
・子どもの発達と遊びと地域社会
・厳しさと優しさと自己統制力
・子どもの生きる力と広義の学力問題
・子どもの生活と学力問題

・教職において人を育てるリーダーシップ
・教師に求められる力量と課題
・いわゆる学級崩壊問題
・学級通信と相互情報伝達
・学級目標・学級運営・学級ルール
・勇気づけと勇気くじき
・カウンセリングマインドとカウンセリング

・教師の協働体制と学校経営
・誇りと自己統制力を育む学校経営
・地域開放型の学校づくりと学校経営
・教職員の協働を高める校長の学校経営
・地域と連携し特色とカリキュラムを創る校長の学校経営

・社会性や協調性の育成
・礼儀・モラル・マナー教育

・学校・教師と地域住民との連携方法
・教員と地域住民との直接懇談の方法
・学校と地域の専門施設との連携・活用方法
・地域理解教育と地域調べ学習
・学校づくりと地域づくり教育・ふるさと教育
・地域の誇りを生かした総合的な学習
・地域における教師のコーディネート能力の育成

・学校統廃合問題
・学校適性規模と適性配置問題
・学校規模に応じた学校運営とカリキュラム
・過疎化による地域の経済的・社会的・文化的問題
・所得格差問題と学力問題
・公共地方財政と学校

・北海道および道東の学校と教育活動の特徴
・北海道の学校と地域社会の連携の特徴
・道東の歴史と文化と風土

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